建設業許可の相続(認可)

1.ポイント

・空白期間を生じることなく相続人が建設業者としての地位を承継できる。

2.認可受付期間

・死亡後30日以内

3.申請できる者

・相続人本人(全許可要件を備えていることが必要。)

4.使用する申請様式

・相続認可申請

5.認可後の許可の有効期間

・死亡日(相続日)から5年

建設業許可の事業承継・相続について

1 建設業許可の事業承継・相続について


令和2年10月1日から、建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度が新設されました。
改正以前の建設業法では、建設業者が事業譲渡・合併・分割(以下、「事業承継」という。)を行う時には、従前の建設業許可を廃業すると共に、新たに建設業許可を新規申請する必要がありました。この場合、廃業日から新たな許可日までの間に、契約額500万円以上(建築一式工事においては1,500
万円以上)の建設業を営むことのできない空白期間が生じるという不利益が生じていました。この制度は、事業承継を行う場合はあらかじめ 事前の認可 を受けること、相続の場合は死亡後30日以内に 相続の認可 を受けることで、空白期間を生じることなく、承継者(譲受人、合併存続法人、
分割承継法人。以下同じ)及び相続人が、被承継者(譲渡人、合併消滅法人、分割被承継法人。以下同じ)及び被相続人の建設業者としての地位を承継することが定められました。なお、事業承継・相続の認可の審査においては、承継者及び相続人が許可要件等を備えていることが必要です。

■ 建設業者としての地位の承継とは(国土交通省建設業許可事務ガイドラインより)


建設業法第3条の規定による建設業の許可(更新を含む。)を受けたことによって発生する権利と義務の総体をいい、承継人は被承継人と同じ地位に立つこととなる。このため、建設業者としての地位の承継人は、被承継人の受けた監督処分や経営事項審査の結果についても、当然に承継することとなる。

一方、承継においては、建設業法第45条から第55条までに規定される罰則については、建設業者としての立場にかかわらず、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った被承継人という法人(個人)そのものに対して課されるものであるため、当該違反行為については、承継人に承継されるものではない。同様に、相続においては、刑法上の罰は、個人に対して課された刑罰であるから、承継によっても引き継がれない。

2 認可申請の手続


(1) 手続の流れ

(2) 事前認可申請の受付期間
<事業承継>
・ 事前相談 随時
・ 書類の作成相談 承継予定日(譲渡及び譲受日、合併日、分割日。以下同じ)の4か月前から
・ 申請受付 承継予定日の閉庁日を含まない前日の2か月前から閉庁日を含まない25日前まで
※ ただし、承継予定日は承継者及び被承継者のそれぞれの許可の有効期間が満了する日の30日前よりも前の日であることを原則とします。
<相続> …… 申請受付は、死亡後30日以内
(3) 処理期間
申請日と承継予定日の間には、開庁日が25日必要となります。

(4) 提出部数及び提出方法

正本・副本・電算入力用紙 各1部 ※ 認可手続において、手数料は発生しません。
ア 電算入力用紙 (手引き)P102~103表において「入力用紙」の列に◎のあるもの
イ 申請書のとじ方 P20「4 提出書類のとじ方」、P104「4 認可申請書類の並べ方」を参照してください。
ウ 申請書類提出(窓口審査)
申請書類・確認資料の確認、申請内容が認可基準を満たしているか、記入漏れの有無及び申請内容を確認できる資料添付の有無の審査を行います。
エ 受 付
窓口審査後、申請受付となります。この時、受付年月日を押印した副本を窓口でお返しします。窓口受付後、内部の本審査で内容に疑義が生じた場合は、別途確認書類や補正資料等を求め、又は営業所調査をすることがあります。その結果、認可の基準に適合しない場合や、後日提出を要する資料が提出されない、承継が不可能となった等の場合には、認可の拒否処分や認可の取消し処分を行いますので御了承ください。

(5) 事業承継及び相続の形態・申請の条件等について

認可申請を行うことができる場合と申請できる者
【事業譲渡】建設業許可業者を含む複数の事業者間で、建設業に関する事業の全部譲渡が行われる場合(個人から法人への法人成、法人廃業からの個人事業主開業を含む。)

○申請できる者 ―― 承継者=譲受人、被承継者=譲渡人
○使用する申請様式 ―― 譲渡認可申請(様式第二十二号の五)(P105参照)
※ 個人事業主の法人成に係る注意事項
・ 法人設立と同時に事業承継する場合には、定款に記載する「発起人」との事業譲渡契約が必要です。
この場合、役員等の一覧表・定款等は受付時には予定のものを添付してください。正式のものは後日提出書類となります。
・ 事業承継日には必ず法人が設立されていること、事業承継日が社会保険等の資格取得日となっていることなど、承継される側の許可要件が途切れないように、十分に注意してください。
・ なお、法人設立を先に行った場合でも、事業開始(予定)日、各種制度の資格取得日は、事業承
継日としてください。
【企業合併】建設業許可業者を含む複数の事業者間で、既許可業者の消滅を伴う企業合併(新設)又は吸収合併が行われる場合
○ 申請できる者 ―― 承継者=合併存続法人、被承継者=合併消滅法人
○ 使用する申請様式 ―― 合併認可申請(様式第二十二号の七)(P106参照)
【企業分割】建設業許可業者が、企業分割によって建設業部門を引き継ぐ新たな建設業者を新設する、若しくは複数の事業者間で、建設業に関する事業が吸収分割により全部譲渡される場合
○ 申請できる者 ―― 承継者=分割承継法人、被承継者=分割被承継法人
○ 使用する申請様式 ―― 分割認可申請(様式第二十二号の八)(P107参照)
【相 続】建設業者である個人事業主が死亡後、他の個人事業主への相続が行われた場合
○ 申請できる者 ―― 相続人本人
○ 使用する申請様式 ―― 相続認可申請(様式第二十二号の十)(P108参照)
<留意事項> ア 相続認可を申請することができるのは、死亡後 30 日以内
イ 相続しない場合や、全業種の承継が不可能である場合は、全部廃業届(P96)の提出が必要であることに留意してください。
ウ 認可申請がなされた場合、申請への処分(認可又は拒否)があるまで、相続人は建設業の許可を受けたものとします(被相続人の許可が続いていたとみなす。)。

都知事認可を受けることのできる場合等


ア 東京都で認可申請できるのは、承継者(相続人)及び被承継者(被相続人)の全てが東京都知事許可業者であるか、又は建設業を営む営業所が東京都内にのみある場合に限ります。(合併や分割等において、被承継者が複数ある場合においても、その全員について同じ。)。
イ 承継者(相続人)又は被承継者(被相続人)の内、いずれか1人でも、東京都以外の許可を受けた建設業者である場合は、国土交通大臣の認可が必要となります。この場合、承継者の主たる営業所の所在する都道府県を所管する地方整備局へ認可申請を行う必要があります。
ウ 承継者(相続人)又は被承継者(被相続人)の内、いずれか1人でも、建設業を営む営業所が東京都以外にあり、かつ、いずれの行政庁の建設業許可も有さない場合、認可申請はできません。
(例)東京都の無許可業者が、無許可であるまま、都外の建設業許可の承継はできません。この場合、当該承継者が新たに建設業許可を取得するか、被承継者の東京都知事許可への許可換えを要します。
エ 東京都知事の許可業者で、国土交通大臣による認可を受けた場合は、その後速やかに東京都知事への届出が必要です(P110 参照)。
引き続き使用することのできる許可番号について
ア 建設業許可業者が無許可業者に承継される場合 → 従前の許可番号が引き継がれる
イ 複数の建設業許可業者間で承継が行われる場合 → 引き継ぐ許可番号の選択が可能

(6) 業種ごとに承継が可能・不可能なパターン

(7) 承継予定日以降の決算報告について

承継者は、被承継者の建設業許可業者としての地位を承継することから、被承継者の決算報告を提出する義務を負います。承継日時点で、被承継者の未提出の決算報告がある場合は、承継者は、これを作成し提出してください。
(例)被承継者A(3月決算)、承継者B(6月決算)である時、5月1日に承継したので、承継直近のA社の決算報告は承継日時点では未提出である場合
→ この時、B社は7月末までにA社の決算報告を提出し、10月末までにB社自身の決算報告を作成し提出することになります。

(8) 承継予定日以降の専任技術者について


承継される許可業種の専任技術者は、承継予定日以降も原則として、業種ごとに同一の専任技術者が引き続き常勤していなければなりません。
(例)許可業者であるA社(大・内)とB社(大・電・管)が合併する場合、内・電・管に関してはA社とB社のそれぞれの専任技術者が承継予定日以降の専任技術者として引き継ぐが、大工に関しては、原則として、許可番号を引き続き使用する許可業者の専任技術者となる。
なお、認可申請の受付後、承継予定日を迎える前に被承継者側で専任技術者の変更が生じた場合は、その日から2週間以内に変更届の提出が必要です。

(9) 後日提出の書類について


事業承継及び相続において、一部の書類は、一定の条件の下、認可受付後に後日提出とすることが認められています(健康保険の加入状況及びその確認資料については、様式第二十二号の六の誓約書の提出が必要)。ただし、法令で定められた期限以内に提出がされない場合、事前認可の取消し処分の
対象となるため、必ず期限以内に提出するようお願いします。なお、具体的な後日提出可能書類とその提出期限については、P103表を参照してください。


(10) 事前認可申請の取下げ


認可申請書を提出し、受付された後に取下げ事由が発生した場合(事業譲渡・合併計画が破棄された等)は、以下の「認可申請の取下げ願」を正・副作成し、申請時に受付された申請書の副本の一式、認可通知後である場合は、認可通知書と合わせて建設業課審査担当窓口まで。
なお、承継予定日を過ぎた場合は、取下げはできません。

(11) 認可の通知


審査完了後、申請者宛に「認可通知書」が郵送される(窓口交付は行っていません。)。


(12) 認可後の許可の有効期間


・ 相続の場合 ⇒ 被相続人の死亡の日(相続の日)から5年
・ 事業承継の場合 ⇒ 承継の日の翌日から5年
※ 承継日当日も許可は有効です。このため、認可通知書記載の有効期間は5年と1日となります。

(例)令和5年12月22日が承継日となる場合
許可日 :令和5年12月23日
許可の有効期間 :令和5年12月22日~令和10年12月22日
更新申請の提出期限 :令和10年12月22日
更新後の許可日 :令和10年12月23日
更新後の有効期間 :令和10年12月23日~令和15年12月22日

(13) 事前認可申請の拒否、認可の取消しについて


申請内容に重大な虚偽があること、承継予定日に承継が行われないこと、又は法定の期限内に後日提出することを誓約した書類が提出なされない等の場合、認可申請について、通知書の発送前であれば認可の拒否、発送後であれば認可の取消しとなります。この場合、被承継者(及び被承継者)の建設業許可の有効期間は、従前のものとなります。

katanojr行政書士事務所